コメダ珈琲店の本店は名古屋市瑞穂区に所在している。内装は他の店舗と然程変わらないが、席の数が多いこともあって、故郷の店舗よりもいくらか客の出入りが多い印象がある。 隣の席で、白髪の男性が背中を丸めて、すっかり体を椅子に預けて眠っている。机と…

ずっとほんとの友達のままでいられたらいいのに

野良猫に話しかける君の声は今までに聞いたどんな声よりも優しくて、生まれて初めて誰かに嫉妬したような気になった。

自閉症が行為主体検出の不足によって生じるのだとすれば、自閉症がspectrumであることから鑑みるに、行為主体検出の過剰による性質も症候群として分類できるのではないだろうか。

ひと息ついた後も君のスカートはベットの裾に脱ぎ捨てられたままだった。カーテンの隙間から差し込む街灯の明かりが厚塗りの陰影をなして、天使を描いた絵画みたいに見えた。君の生命を具象する、迂曲した輪郭が空間に浮かぶ。私はそれに何ら肉欲を抱かず、…

「恋愛感情がわからない」という言葉を隠蓑にして、他人の好意と己の惰弱さに向き合うのを避けている。だけれど実際わからないのだから仕方がない。というか他の人もわかった気になっているだけなのではないだろうか。別にわかっていなくても子供は生まれる…

恋愛なんて出会ってから別れるまでの過程にすぎない。だけど俺にはその過程が早回しに見えてしまって、密度の高い恋愛小説として具象化できない。

資本主義経済は個人の行動に関わらず自立的に拡張し維持され続ける機構であって、構造内での所在地は参加者の幸福には直結しないのではないか?

エンドロールでは隣にいられたらいいな

野菜が健康にいい理由についての仮説

動物の群れにおいて長寿は必ずしも利益をもたらすわけではなく、生殖に関わらない個体が群れに存在することは、食糧等の資源の不足を招くので適応的ではない。 人間を長寿化させる因子になる食材のほとんどは野菜であり、それらは低カロリーなので採集の優先…

眼窩を抉るような痛みが続いている。時刻は17時だから日が沈むまであと2時間ほどこの苦痛は止まらないのだろう。 この先自分がどれだけ経済的に豊かになろうと、社会的に成功しようと、交友関係に恵まれようと、この苦痛からは逃れられない。 その事実が精神…

「君の笑い方はなぜか淋しさに似てた 君の歌い方は今日の朝焼けに見えた」 君が口遊むのを一度聴いただけなのにずっと忘れないのは、君のことを歌ってるみたいに思えるからなのかな

人を褒めてる時間が一番幸せな気がする。頭に浮かぶ褒め言葉を口から発するだけで相手は幸せになるし、それに共鳴した俺も幸せ。 女性の方が簡単だから好き。可愛いとか言っといたらだいたいなんとかなるから。実際みんな可愛いから嘘じゃないし。 俺は人間…

シャワーを浴びていたらブログに書けそうなことを思いついたのだけれど、髪を乾かしている間に忘れてしまった。こんなことはたびたたびある。浴室にいる間だけはひときわ頭が冴えるからだろう。それに顔の調子も良い。人中が短く、肌は艶やかで、頬が平たい…

サビを迎えた途端に音楽を止めたくなる

暑さで諸々の努力に身が入らない。けれども何かに熱中していたいという精神的な希求は変わらずに在るから、生活を不本意に空費して疲労だけが溜まる。だから文章を書いて時間をつぶすという発想に至った次第である。 このブログに読者がいるのかは定かではな…

cute aggression

彼女の喉から漏れる矯声が悲鳴みたいに聞こえて、劣情を喚起させた。右の掌を華奢な首に押し当てると声が一層高くなって、表情は恍惚と苦悶が衝突するように歪んだ。金属が軋むような音が断続的に響く。 彼女は僕の眼差しから愛情を読み取っている。そして、…

男性の独白体は苦しみを吐露するようにはできていない。だから言葉にする術のない鬱屈だけが蓄積されていく。それを女性主人公に仮託することによって太宰治の『女生徒』に収録されてるような物語が形成されるのかもしれない。 私のことが好きな人のおどおど…

mol-74のエイプリルを聴いている。 4月なんてとうに過ぎ去ったから記憶も薄れて、思い出が美しく加工されていくようになった。 映画を綺麗だとか思えるほど僕の心は綺麗じゃない。たぶん君と見たから綺麗だったんだろうな。とか言って、加工された思い出に浸…

曖昧な日々世界で

聴く人の数だけ忘れられないままの君がいるのかな

進行形で干渉できなくなって初めて物語になる

彼女の家から僕の下宿までの道のりは長い。バスと電車を乗り継ぎ、その後またバスに乗らねばならない。彼女は僕の最寄り駅で降りた経験が無いと言うから、初めて会う日は駅まで迎えに行く運びになった。 バスを降りて駅に向かうと、改札を出たところで彼女は…

My Hair is Badの『綾』の「どこまでも優しい君が好きだったよ。じゃあもう夢から醒めるね。」というフレーズだけが、ずっと頭に残っている。 自分の意思で夢から醒めることなんてできないのに。

ありきたりな自然消滅で終わってしまいそう。あれほど頻繁に会っていたのに呆気ないな。 互いに抱いていた感情に恋愛感情が含まれていたのかを明らかにすることも、もう叶わなくなってしまった。好きと言い合ったこともあるけれどそれが本心なのか、過剰に分…

満開の桜並木を見ると思い出す人がいる。 そんな陳腐な書き出しには辟易している。記憶を操作して感傷に浸ったり、頭に浮かんだ言葉に無理やり感情を結びつけようとするのは愚かなことだ。何よりこれを書いている今は桜なんてとうに散っている。だから当然、…

5/31

それからしばらく身を重ねていた。 君の体温と身体の重みだけが世界の全てだったから、肌が離れた途端に心まで冷えるようだった。 私はずっとまどろみに浸っていたいのに、君は先にふたりの夢から覚めて私に背を向けてしまう。あれだけ軽い気持ちで可愛いっ…

6/19

僕のアパートでふたりで映画を見ていた。 開幕から幾許かの時間が過ぎて、漫ろに隣に座る君を見た。薄暗い部屋で横顔が仄白く照らされていて、黒目がちな瞳は琥珀のように鈍く澄んでいる。それがいつになく嬌しく見えて、世俗の綺麗なものなんて何も要らない…

過集中の時って思ってもないこと書けるから楽しいな。指先が心に追いつかなかった。

君の声は忘れたくないよ。人の記憶で最初に消えちゃうのって声らしいね。だけど言葉を先に忘れてしまった。喜んでる声、悲しんでる声、怒ってる声、どれもちゃんと覚えてるけど、なんて言われたのかどうしても思い出せないし思い出したくもない。静かに震え…

人間が夜空を最も美しく感じるのは10歳のときで、それより歳を重ねると霞んでいく一方だという言説をどこかで読んだことがある。ふと思い出していくつかの言葉の配列を用いて検索してみたが、原文は見つからなかった。私の願望だったのかもしれない。 高校に…

休日

カーテンを開くと朝の匂いがぬるかった。窓を一枚隔ててもわかる、白の匂い。緩やかな倦怠感とそれに伴う安堵がある。昨日の暑さはどこへやら、ぼやけた日光に揺らぐ作り物の自然は楚々として見えた。冷えた風に撫でられた瞼が落ちる。