コメダ珈琲店の本店は名古屋市瑞穂区に所在している。内装は他の店舗と然程変わらないが、席の数が多いこともあって、故郷の店舗よりもいくらか客の出入りが多い印象がある。

隣の席で、白髪の男性が背中を丸めて、すっかり体を椅子に預けて眠っている。机と床に散乱したA4用紙に印刷されている標高図とB罫のノートを見るに、この老爺の学究は歳を重ねても止まないようだ。眼鏡越しの瞼に、五十年後の自分が見える。

規則的に上下を繰り返す腹部の奥で稼働する心肺。もしもこの動きが止まったらどうするべきか、想像を巡らせる。手首の脈をとり、それから呼吸を確かめ、異常が見られたら店員に報告した後に救急車を呼ぶ。似たような想定はこれまでに何度も繰り返してきたが、この癖は畢生続くと思われる。