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僕のアパートでふたりで映画を見ていた。

開幕から幾許かの時間が過ぎて、漫ろに隣に座る君を見た。薄暗い部屋で横顔が仄白く照らされていて、黒目がちな瞳は琥珀のように鈍く澄んでいる。それがいつになく嬌しく見えて、世俗の綺麗なものなんて何も要らないけれど、君を失うことには耐えられないだろうなと改めて思った。右手を伸ばして、栗色の髪に指先を通してから頬をなぞる。その動作は宿世から決まっていたみたいに馴染んで感じられた。そしたら君はいつも通りの、これから起きることを何も知らないふりをするような稚い表情で、物憂げな眼差しをもって僕を見る。凪いだ海みたいな虹彩のゆらめきが愛しく澄んでいたから、接吻をすることが憚られて、微笑の後にくすぐるように顎を撫でた。

君は顎を小さく上げて、「その撫で方やだ。猫じゃない。」と呟いた。満更でもないような声色も、笑うと細くなる目尻も、やっぱり本当の猫みたいで可愛かった。

 

 

春が終わってしまう前にもう一度逢いたいと思った。