2023-07-01から1ヶ月間の記事一覧

cute aggression

彼女の喉から漏れる矯声が悲鳴みたいに聞こえて、劣情を喚起させた。右の掌を華奢な首に押し当てると声が一層高くなって、表情は恍惚と苦悶が衝突するように歪んだ。金属が軋むような音が断続的に響く。 彼女は僕の眼差しから愛情を読み取っている。そして、…

男性の独白体は苦しみを吐露するようにはできていない。だから言葉にする術のない鬱屈だけが蓄積されていく。それを女性主人公に仮託することによって太宰治の『女生徒』に収録されてるような物語が形成されるのかもしれない。 私のことが好きな人のおどおど…

mol-74のエイプリルを聴いている。 4月なんてとうに過ぎ去ったから記憶も薄れて、思い出が美しく加工されていくようになった。 映画を綺麗だとか思えるほど僕の心は綺麗じゃない。たぶん君と見たから綺麗だったんだろうな。とか言って、加工された思い出に浸…

曖昧な日々世界で

聴く人の数だけ忘れられないままの君がいるのかな

進行形で干渉できなくなって初めて物語になる

彼女の家から僕の下宿までの道のりは長い。バスと電車を乗り継ぎ、その後またバスに乗らねばならない。彼女は僕の最寄り駅で降りた経験が無いと言うから、初めて会う日は駅まで迎えに行く運びになった。 バスを降りて駅に向かうと、改札を出たところで彼女は…

My Hair is Badの『綾』の「どこまでも優しい君が好きだったよ。じゃあもう夢から醒めるね。」というフレーズだけが、ずっと頭に残っている。 自分の意思で夢から醒めることなんてできないのに。

ありきたりな自然消滅で終わってしまいそう。あれほど頻繁に会っていたのに呆気ないな。 互いに抱いていた感情に恋愛感情が含まれていたのかを明らかにすることも、もう叶わなくなってしまった。好きと言い合ったこともあるけれどそれが本心なのか、過剰に分…

満開の桜並木を見ると思い出す人がいる。 そんな陳腐な書き出しには辟易している。記憶を操作して感傷に浸ったり、頭に浮かんだ言葉に無理やり感情を結びつけようとするのは愚かなことだ。何よりこれを書いている今は桜なんてとうに散っている。だから当然、…